Watchburg Music
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音楽家の思い出


高い音楽の基礎力とエンターテインメント性

第二回
ジョージ・デュークの思い出

とある週末、筆者が論文の執筆中にどうしてもコーヒーが飲みたくなりました。
ところが、所有していたコーヒーメーカーをたまたま大学に持って行ってしまっていたので、近所のスターバックスに行きました。

すると、そのスターバックスで3枚で$5の中古CDセールをやっていたのです。
(アメリカには本屋さんと喫茶店が一緒になっているところが沢山あります)

CD棚を物色していると、その中にハーブ・エリスとレイ・ブラウン(ジャズの演奏が達者な人達)のライブアルバムが置いてありました。
他のバンドメンバーを見てみると、そこには先日亡くなったばかりのピアニスト、ジョージ・デュークの名が。
ピアニストとしても有名ですが、もしかするとディスコ音楽や歌手としての活動の方が一般に知られているのかもしれません。


今から2008年辺りでしょうか、近所の大学の無料クリニックにジョージ・デュークが来るというので、観に行った事があります。
一通り彼が音楽の話を済ませると、「誰かここに来て私の前で演奏してみないか」と言うのです。
すると一人のアフリカ系アメリカ人の学生が名乗りを挙げました。
どうやら学校でも有名なジャズピアノの名手らしく、周りの学生も「行け、行け」と後押しをしていました。

そしてソロで『チュニジアの夜』だかなんだかを演奏しました。
その勢いのある演奏に、他の学生達も「イェーイ」なんて言いながら大きな拍手を送っていました。

演奏後、ジョージ・デュークは「君は音の粒を揃える練習をするといいかもね!」とか言って、両手で普通の音階を3オクターブくらい弾きました。
特に凄く速く弾いた訳ではないのですが、それはもうCDから聴こえてくる模範演奏のような音で、本当に同じピアノで演奏しているのかと一同唖然。
もちろん演奏した学生もその学校ではトップレベルの腕前だったのでしょうが、これが格の違いってやつかと思い知らされました。


大御所なのに全く偉そうな態度を取らず、学生の質問にも真摯な受け答えをしていたのが印象的でした。
非常に高い音楽の基礎能力を持っていながらも、コアな音楽ファンでない一般のお客さんまで楽しめるようにという姿勢は常に見習いたいなと思います。
(そんなことを言うと現代音楽の教授には怒られそうですが…)

直後に行ったコンサートも盛況で、非常にパワフルなステージでした。
その時点で既に還暦は迎えていたというのだから、驚きです。


以上、ジョージ・デュークの思い出でした。


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