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ミステリーバーグ


交通警備員が宿舎で体験した恐怖

第二話
一緒に寝ましょう
語り手 40代男性

 私、東京の会社に勤めていたのですがね、30代になってから地元に帰ってきて交通警備の仕事を始めました。いわゆるUターン就職ってヤツです。ある日の交通警備の現場が観光地になっている有名な峠でした。そこは戦前の脱線事故、戦後の崩落事故、近くでは未解決の殺人事件もあったりして、心霊スポットとしても知られている場所です。その現場は夜勤もあって、宿舎で仮眠する班と警備にあたる班の交代制で仕事を回していました。私と同じ班だったのはかなり年配の方で、どうせ話も合わないだろうなと思い、特に仕事以外の個人的な会話をするということもありませんでした。

 私とその方の仕事が終わり、二人で宿舎に戻ってきたのは、夜も遅い時間でした。同僚はすぐに仮眠室で寝てしまい、特段することもない私は、ボーッとテレビを眺めていました。「この峠は幽霊が出るぞ」なんていう話を仕事の先輩からもよく聞いていて、なんとなく嫌な気配は感じていたのですが、気のせいだと思い込むことにしていました。

 それは突然やってきました。仕事の疲れもあってテレビを見ながら少しうつらうつらしてきた時のことです。耳元でハッキリと「一緒に寝ましょう」という女の声がしたのです。あまりにも驚いた時、人間って本当に飛び上がるのですね。「ギャーッ!!」という悲鳴を上げて飛び上がった私は、すぐに同僚を叩き起こし、「この宿舎、何かいますよ!!」って話したのですが、時間も時間ですし、まともに取り合ってはくれませんでした。

 この出来事を友人に話しても、「夢や入眠時の幻聴だよ」って言われてしまうのですが、交通警備の仕事をしていて、同じ宿舎に泊まったことのある人に話をすると、みんな口を揃えて「ほらね、言った通りだろう」って言われます。私、確信しています。やっぱり、あの峠には何かいますよ。


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