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知ったかぶりのクラシック


今なお物議を醸し出す問題作

サティ
胎児の干物

冗談なのか狂気なのか、謎のメッセージと笑激のラストが今なお物議を醸し出す問題作!!
これは「音楽界の異端児」のクラシック界に対する挑戦なのだろうか!?

エリック・サティ(1866-1925)は「あなたが欲しい」「ジムノペディ」「グノシエンヌ」等の作品で知られるフランス出身の作曲家です。
これらの曲は数多くのテレビ番組やコマーシャルで使用されているので、一度は耳にされた事があるかと思います。

サティは既存の常識を打ち破る奇抜な発想で、後のクラシック界に大きな影響を与えた人物とされています。
オーソドックスな音楽理論から外れたハーモニー、同じ音形の繰り返し、前後の脈絡が無い不条理な展開等、当時の音楽界では思いもよらないようなアイディアを次々と作品の中に取り入れていました。

また非常に風変わりな性格でも知られています。
音大が退屈だからと退学して軍隊に入ったり。
そこでも嫌気がさし、寒い夜に裸になってわざと気管支炎を患って除隊したり。
かと思えば40歳くらいで出来たばかりの音大に入学して、真面目に卒業したり。

他にも演奏会の会場で傘で決闘をして警察に留置されたり、死後自宅から100本以上の未使用の傘が発見されたり。
おもしろエピソードに関しては枚挙に暇がありません。

私生活ではコクトーやピカソといった他ジャンルの芸術家とも親交があり、また当時の一流の作曲家とは違い酒場での演奏で主に生計を立てていました。
そのため、現在でいうところのBGMや環境音楽といったジャンルの開拓者とも知られています。

サティは《犬のためのぶよぶよとした前奏曲》や《いつも片目を開けて眠るよく肥った猿の王様を目覚めさせる為のファンファーレ》のように一風変わったタイトルを自身に作品に付けることでも有名です。
この《胎児の干物》も非常に変わったタイトルを持つ、謎に満ちた作品です。

《胎児の干物》は1つの楽章が1〜2分程度の、非常に短い三楽章から成るピアノ曲です。
まず音楽の雰囲気とタイトルが一致しておらず、そして短い曲なのに限りなく仰々しいラスト。
更には楽譜にサティ自身の随筆と謎の演奏指示が書き込まれています。
詳しくは下記URLを参照。

ひからびた胎児とは Weblio辞書

 

第一楽章
『ナマコの胎児』

ナマコっぽさがまるでない軽快なリズム。
「歯の痛いナイチンゲールのように」という謎の演奏指示。
そして仰々しいまでのラスト。

第二楽章
『甲殻類の胎児』

重々しい雰囲気の楽章。
「シューベルトの有名なマズルカの引用」というメッセージが楽譜に示されているが、シューベルトはマズルカを作曲したことがない。
正しくはショパンの葬送行進曲なのだが、ここのあたりのユーモアセンスが非常にシュール。

第三楽章
『柄眼類の胎児』

再び明るく軽快なリズムの楽章。
そして仰々しさを通り越した笑撃のラスト。

 

それでは聴いて下さい。
サティ《胎児の干物》


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