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知ったかぶりのクラシック


芸術家に迫る社会主義リアリズムの魔の手

ショスタコーヴィチ
弦楽四重奏曲第八番

芸術家に迫る社会主義リアリズムの魔の手!!
これは共産主義に対する静かなる抵抗なのか!?

ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)は20世紀を代表するソビエト連邦の作曲家で、特に15の交響曲と弦楽四重奏曲で知られています。
重々しい作品から軽妙洒脱な作品まで、非常に多くの作品を残したことでも有名です。
特に交響曲五番の第一楽章や第四楽章はテレビ(『ビートたけしのTVタックル』他)などでも頻繁にBGMとして用いられているので、一度は耳にしたことのある人も多いかと思われます。

ショスタコーヴィチは1906年に社会主義革命以前のロシア帝国首都、サンクトペテルブルクに生まれます。
名門ペテルブルク音楽院の卒業制作で発表した交響曲第一番は評判を呼び、当時のソ連メディアではモーツァルトの再来と評されました。
この時ショスタコーヴィチ、弱冠18歳。
第一回ショパン国際ピアノコンクールにも出場する程のピアノの名手でもありました。

その後、共産党政府による芸術の厳しい取り締まりにより、歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』の公演禁止や『交響曲第四番』の初演キャンセルなど、順調な音楽活動を展開することは出来なくなりました。
スターリンによる大量粛正と恐怖政治が続く中で、自らの音楽生命を危ぶんだショスタコーヴィチは音楽の方向性の転換を余儀なくされたと言われています。
自らの芸術性と体制への迎合に葛藤しながらも、ショスタコーヴィチは『交響曲第五番』をはじめとする傑作を次々と発表していきます。

この《弦楽四重奏曲第八番》は、1960年7月12日から14日の3日間で書かれたと言われています。数ある彼の弦楽四重奏の中でも最も有名で、演奏機会も多いです。
ショスタコーヴィチ音型と呼ばれるモチーフが取り込まれていたり、過去のショスタコーヴィチ作品からの引用が多く見られるため作曲者自身をテーマにしているのではと言われています。

第一楽章 Largo
重々しい主題が特徴的

第二楽章 Allegro molto
ピアノ三重奏曲第二番からの大胆な引用が見られます。非常に激しい主題が特徴的で、一聴するとオーケストラの作品のようにも聞こえるほどです。

第三楽章 Allegretto
ワルツ風の楽章ですが、陰鬱な旋律が特徴的です。

第四楽章 Largo
最初の主題がノックの音を連想させます。公安や秘密警察に追われる恐怖を描いたものなのでしょうか。

第五楽章 Largo
他の楽章からの主題が引用されている、暗く重々しい楽章です。エレジー(悲しみや死をテーマにした楽曲)のようにも聞こえます。

それでは聴いて下さい。
ショスタコーヴィチ《弦楽四重奏曲第八番》より第二楽章 Allegro molto


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