Watchburg Music
Cover Photo

知ったかぶりのクラシック


聴いて楽しい現代音楽

アクター
ティンパニと管弦楽のための協奏曲

音楽の存在意義は聴いて楽しむこと!
自己満足型の現代作曲家達に疑問を投げかける、聴いて楽しい現代音楽!!

とある秋の夕暮れ、僕はラジオの音楽チャンネルを聴きながら大学の宿題をしていました。
するとラジオから流れる躍動感溢れるティンパニのリズムと、明朗で爽快な旋律に突然ペンが止まってしまいました。

「はて、こんな曲は今まで聴いたことがない。この曲は一体誰の何という作品なんだろうか」
早速ラジオ局のホームページにアクセスして、作曲者と作品名を調べたところ、"Concerto for Timpani and Orchestra" by Lee Actorと書かれていました。

 

リー・アクターは1952年生まれ、アメリカの現役作曲家です。
コロラド州デンバーに生まれた彼は、ニューヨークのレンセラー工科大学で学び、電子工学の分野で学士号、修士号を取得します。
また彼は大学で電子工学を学ぶ傍ら、作曲や音楽理論の個人レッスンを受けました。

大学院卒業から数年後、彼はカリフォルニアのサンノゼ州立大学に進み、今度は作曲で修士号を取得します。
その後カリフォルニア大学バークレー校で音楽の博士課程に進んだとされていますが、実際に博士号を取ったかどうかは定かではありません。

音楽的には今時珍しく明朗爽快、「クラシック音楽や現代音楽が苦手」という人でもすんなりと受け入れられるタイプの作曲家です。
大規模な管弦楽曲を手掛けることが多く、数々の受賞歴があるようです。

作曲以外にもヴァイオリニスト、指揮者としても活動しているようですが、音楽活動が活発だったのはどうやらサンノゼ州立大学時代、それから2000年代以降のみのようです。
しかしながら信頼できる参考資料が本人の<a href="http://www.leeactor.com" target="_blank" title="公式ホームページ">公式ホームページ</a>のみなので、どういった経歴でどのような人となりをしているのか不明な点が多いです。

 

この《ティンパニと管弦楽のための協奏曲》は2005年に作曲され、2006年の2月18日にパロ・アルト交響楽団によって初演されました。

協奏曲とその他の管弦楽曲の大きな違いは、オーケストラの他に主役のソロ演奏者が別にいるという点です。
例えばピアノ協奏曲にはオーケストラとピアノ独奏者が必要で、ヴァイオリン協奏曲にはオーケストラとヴァイオリン奏者が必要です。

協奏曲とは元々イタリア語でConcerto、即ちコントラスト(対比)という意味です。
つまりオーケストラによる演奏と、ソロ奏者による独奏、二つの異なる音楽の対比を楽しむ、それこそが協奏曲なのです。

このアクターの協奏曲でのソロ楽器はティンパニです。
ティンパニとは半球形の胴体に脚がついた大型の太鼓です。
小学校や中学校の音楽室で目にした方も多いのではないでしょうか。

ティンパニの一番の特徴はなんといっても音程があるという点です。
太鼓の多くは音程を持たない打撃音を発しますが、ティンパニは(整数倍の倍音を発生させる構造のため)ドレミファソラシドといった特定の音程を奏でることが出来ます。
ティンパニの大きさによって音程は違い、また足で操作するペダルによって音程を上下させることも可能です。
ティンパニを叩いた後にペダルを操作することによっても音程を変化させることも出来、この曲の中でも効果的に使用されています。

曲の終盤(10:05の当り)のソロパートでは、ティンパニによってメインメロディが演奏されていますが、このような旋律を奏でることが出来るのはティンパニならではです。

楽譜を見ると非常にシンプルで分かりやすく、複雑なテクニックや和声はほとんど見られないです。
口の悪い音楽評論家であれば「単純で深みが無い」等と言うかも知れませんが、その分ギミック無し、削ぎ落とされた芯の部分の音楽で勝負をしているような印象が見受けられます。

この曲はやはり、力強い主旋律と対比する静かなパートからの盛り上がり、それらに絡むティンパニの作る独特のワクワク感や高揚感が一番の魅力ではないでしょうか。
何より聴いていて楽しいというのが良いことだと思います。

 

それでは聴いて頂きましょう。
アクター《ティンパニと管弦楽のための協奏曲》


記事一覧へ戻る