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知ったかぶりのクラシック


キューバからやって来たギターの革命児

ブローウェル
シンプルなエチュード

キューバからやって来たギターの革命児!!

レオ・ブローウェル(1939-)はキューバのハバナ出身のギタリスト・作曲家です。
幼少の頃、医者であった父の影響でギターを始めます。
その頃は楽譜が手に入らなかったのか、主に自分の耳を頼りにクラシック・ギターのレパートリーを増やしていったそうです。

その後アメリカに渡り、ハートフォード大学付属ハート音楽院、それからジュリアード音楽院でギターと作曲を学びます。
ギタリストとして数多くの演奏会、講演やレコーディングに関わるようになるのですが、80年代始めに中指の腱を痛めてからは演奏家としては一線を退きます。

彼の作品はギターによる独奏曲が多く、初期の作品に於いては中南米の民族性を感じさせるものとなっています。
1970年頃から作品はより現代音楽に接近していきますが、実験音楽のようにはなっていないのが特徴です。
他にも多くのギター協奏曲や映画音楽を残した事でも知られています。
現在では社会主義国であるキューバにて多くの公職に就いています。

 

この《シンプルなエチュード》は1973年に前半の1-10番が、2001年には《新シンプルなエチュード》として11-20番までが作曲されました。
『エチュード』というのは日本語で『練習曲』という意味で、それぞれの楽章が特定の演奏テクニックの習得に役立つように書かれています。

このような練習曲をより音楽的なものに発展させて、演奏会などで弾いてもその他の曲に遜色の無いものを『コンサート・エチュード』と呼びます。
有名なものとしてショパンの『革命(練習曲作品10-12)』や『別れの曲(練習曲作品10-3)』等が挙げられます。
ブローウェルの《シンプルなエチュード》は演奏が比較的容易で、それぞれの楽章が非常に短いですが、単なる練習曲としてではなく、コンサートでは組曲のように演奏される事も多いようです。

ロックやポップスでは花形楽器として扱われるギターですが、クラシックの世界ではイマイチマイナーな楽器です。
というのも、フラメンコのようにかき鳴らすのならともかく、指でつま弾く際の音量が非常に小さいという大きな問題点があります。
そのために現代のコンサートではマイクとスピーカーが使われる事が多いのが現状です。

また複数の音を一度に弾く事が出来るというのがギターの大きな特徴ですが、ピアノのようにどんな和音も演奏が可能という訳ではなく、非常に限定的で、ギターの構造を分かっていないと作曲が非常に難しいという問題点が挙げられます。
そのためにクラシック・ギター曲のレパートリーはあまり多くなく、そのほとんどがルネサンスやバロック期にルーツを持つ非常に古典的な作品、もしくはスペインやフラメンコにルーツを持つ非常にラテン的な作品で占められていました。

しかしながらブローウェルは、自身が卓越したギタリストだった事、それから現代音楽への造詣の深さから、今までには無かった新しい響きを持ったギター曲を数多く生み出しました。
今ではそれらの曲はギター奏者にとっては欠かせないレパートリーとなっています。

それではお聴き下さいませ。
ブローウェルで《シンプルなエチュード》

シンプルなエチュード No.1-5

シンプルなエチュード No.6-10


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