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アメリカ音楽留学入門講座


学費が安く編入も可能な二年制公立短大

第三回
コミュニティ・カレッジのメリットとデメリット

前回の記事で言及したコミュニティ・カレッジの活用について本頁では説明していきたいと思います。

コミュニティ・カレッジとは、アメリカに1000校以上設置されている2年制の公立大学で、卒業すると准学士号が得られ、一年間アメリカ国内での就労許可が下ります。

コミュニティ・カレッジの特徴はまず、学費が非常に安い事です。
公立の大学なので州税を払っている現地の学生より高い学費を納めなくてはなりませんが、それでも一学期(3〜4ヶ月)2000〜5000ドル程で、(学校によって大きく差があります)語学学校はもとより、アメリカの4年制の大学に比べて格段に学費が安く設定されています。

また入学試験のレベルが大分低めに設定されています。
TOEFL(外国人向けの英語のテスト)450〜500点程が多くのコミュニティ・カレッジの入学基準となっていて、また基準点に達していなくても入学を許可される場合も多く、その際には入学後にESL(外国人向けの英語)の単位を取り、初めてアメリカ人と同様に授業を取れるようになります。

4年制の大学に比べて、やはり教育レベルは高くないというのが現状ですが、コミュニティ・カレッジには一通りの分野の授業がそろっていて、教員の多くは修士号以上の取得者です。
もちろん音楽の専攻も可能な所がほとんどです。
本格的に4年制の大学で学ぶ前に、英語での音楽コミュニケーションを準備しておくというのも一つの手です。

そしてコミュニティ・カレッジの一番の強みは編入制度です。
コミュニティ・カレッジの一般教養の授業は多くの大学で単位交換が可能です。
大抵の音楽大学では文学や西洋史が必修となっているので、コミュニティ・カレッジで成績がC以上であれば単位が交換出来、高い学費を払って音楽大学で一般教養の単位を取る必要が無くなるのです。

つまりこの制度を活用すれば、まず志望校の近くのコミュニティ・カレッジに通い、英語を勉強して単位を取りながら、現地情報を仕入れるという戦略が立てられるわけです。

しかしながらコミュニティ・カレッジにもメリットばかりではなく、デメリットも同時に存在します。

外国人にとって言語の異なる国の大学に通うというのは大変であるし、留学生の場合は高い志を持って入学する人が多いですが、大半を占める現地の学生は、やはり何かしらの理由があって4年制の大学に通えなかった人達です。
金銭面から、後に4年制大学に編入を考えている真面目な学生もいるのは事実ですが、コミュニティ・カレッジは誰にでも広く教育機会を持たせるという側面があるので、入試が非常に甘く、誰でも入学出来てしまうのです。

日本にも教育格差という言葉がありますが、アメリカの教育格差は日本のそれとはレベルが違います。
そのため、コミュニティ・カレッジには掛け算の九九が言えないだとか、+−の足し算引き算が出来ないといったレベルの学生が少なくありません。
他にも全身入れ墨で如何にもといった風格の学生や、ガラの悪い集団、また生涯学習のため、60〜70歳代といった御高齢の学生も多いです。
コミュニティ・カレッジは日本の短大のような雰囲気とはまるで違い、高い志を持った学生がそう多くない環境の中での学習が求められます。

他にもコミュニティ・カレッジに留学する場合は語学留学と違いVISAが絶対に必要で、また4年生の大学と同様にカリキュラムに沿って授業を受けるシステムなので夏休みを利用した短期留学といったことは出来ません。
日本の大学と違い、春、夏、秋のどの学期からも始める事が出来ますが、最低でも数ヶ月はアメリカに滞在する必要があり、新卒採用至上主義の日本社会において、その数ヶ月は致命的になりかねません。

それから編入に関してですが、単位交換に関しても全ての単位が4年制大学の単位として認められる訳ではありません。
編入したいと考えている4年制大学の単位交換アドバイザーときちんと話をしてから自分で授業を選択していかなくてはなりません。

このようにコミュニティ・カレッジにも語学留学同様、メリットとデメリットがありますが、上手く活用する事によって音楽留学に役立つかも知れません。

ちなみに筆者自身はコミュニティ・カレッジの存在を音大入学後に知り、学費の安いコミュニティ・カレッジで英文学や西洋史等、24単位を取得して単位交換をしました。
ただ渡米前にコミュニティ・カレッジに関する情報を知っていたら、留学プランに関してもう少し工夫が出来たかなとも思っています。

補足ですが、日本の大学で取得した単位も交換出来ました。
これらの単位は一般教養として扱われたため、わずかながら卒業単位として役に立ちました。


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