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【コード理論大全】質問コーナー


テンションのつけ方、混乱しませんか?

第九回
非ダイアトニックコードのテンション

Q: P.386の解答34について質問です。B7のテンションには必ず臨時記号が付くのではないでしょうか?テンションの法則b.に従えば、長九度(半音14個分)音程はC#、F#の長九度(半音14個分)音程はG#となるかと思います。またF7に対しても同様に、テンションは9th(G)と13th(D)と理解しています。



P386の解答34について一つ目のご質問、B7のテンションですが、まずB7はV7/VIというセカンダリードミナントとしてアナライズされます。セカンダリードミナントのアヴェイラブルテンションの導出については、118ページから解説がされています。図I-3cと図I-3dに書いてある通り、V7/VIのアヴェイラブルテンションは♭9、♯9、♭13、♯11となります。V7/VIの場合、テンション9と13については、非ダイアトニックなナチュラルテンションですので、アヴェイラブルテンションとはなりません。

ただご指摘を頂いて私も解答34を見させて頂いたところ、過去刷ではB7のテンション♯9が記載されていないことを発見したので、編集者と打合せの上、修正をするかどうか、またどのように修正を行うのか検討させて頂きます。こういった点が混乱を来たす原因となってしまっていたら、大変申し訳ございません。

F7についてですが、これはセカンダリードミナントではなく、モーダルインターチェンジコードの♭VII7として、ここではアナライズを行っています。(このコードをモーダルインターチェンジコードと取るか、偽終始と取るかは、後の章のP201にも議論があります)この曲のキーはGメジャーで、F7の借用先となるスケールはGマイナー(エオリアンスケール)です。モーダルインターチェンジコードのアヴェイラブルテンションの導出については、P151に説明がありますが、「調性内の音高」の『調性』については二通りの解釈が出来ます。元の楽曲の調性、つまりGメジャー、もしくは借用先の調性、Gマイナーの両方です。P151ではII-7(♭5)でもテンション9が使われる場合があるということを例に説明をしています。「Gメジャーの調性」を採用した際にはテンション#11であるBはアヴェイラブルテンションとなります。

今回は調性とテンションという観点から説明をしましたが、これと同じ理論をコードスケールの観点から解説しているのが、P288からの「ドミナント機能を持たないドミナントコードのコードスケール」となっており、P289にはbVII7のコードスケールとしてテンション♯11を含むリディアン♭7を採用させるということが示してあります。

ただV7/VI上でナチュラルテンションを使ってはいけないであるとか、♭VII7にはテンション♯11が有効といった説明は、過去の慣例・慣習と理論的な整合性から生じた一般論に過ぎません。例えばV7/VI上のナチュラルテンションの使用などは、非常にトリッキーで、一聴すると違和感を感じるかもしれませんが、かえって聴き手の心に残るサウンドとなるかもしれないので、演奏上、楽曲制作上でご自身が良いと感じられたものは、慣例にとらわれず過ぎずに積極的に取り入れて行ってみてください。

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