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【コード理論大全】質問コーナー


V7/◯とsubV7/◯の置換が間違っていませんか?

第十一回
より汎用性の高いコード進行の採用

Q: 第七編の三章の譜例に対しての質問です。P.176と177の図Ⅲ-1bと図Ⅲ-1cを比べると、セカンダリードミナントとサブスティチュートドミナントを入れ替えた進行となっていないように思えます。図Ⅲ-1bの2小節目の後半がA♭maj7となっており、図Ⅲ-1cの2小節目の後半がE♭7となっています。図Ⅲ-1bではA♭maj7からDm7(♭5)へ解決する記述になっていませんが、図Ⅲ-1cではE♭7からDm7(♭5)へ解決する記述になっています。これは図Ⅲ-1b側の矢印の記述漏れでしょうか。次に、A♭maj7のSubstitute DominantはA7になるのではないかと思いますが、図Ⅲ-1cではE♭7となっており、どちらかが間違いではないかと思っています。図Ⅲ-1bのA♭maj7がDm7(♭5)のSecondary Dominantであれば、A♭maj7ではなくA7が正しいのではないかと思います。そうすれば 図Ⅲ-1cのE♭7がSubstitute Dominantになるというのが納得できます。



誤解を招いてしまい大変申し訳ございませんが、図III-1cは、図III-1bの二小節目、三小節目及び四小節目の最初のコードに対してsubV7が解決するよう「一部コード」を置換した進行となっており、セカンダリードミナントとサブスティチュートドミナントを入れ替えたコード進行ではありません。ですので、A♭maj7からDm7(♭5)への進行では矢印を使ったアナライズは行われません。

また図III-1bでは意図的にA7ではなくA♭maj7をコード進行に加えたのですが、ここで再度セカンダリードミナントの定義を考えてみてください。P118の図I-2cに記載されている通り、ルートが非ダイアトニックとなる場合はセカンダリードミナントとしては扱われません。同様にマイナーキーの場合にはP120の図I-3cにV7/IIが存在しないということが示されています(P125からはマイナーキーにおけるV7/IIを仮定してはいますが、これは序文にあるよう通常の音楽理論の枠組みを超えた考えです)。

A7を用いた場合には、一時的な同主調への転調など、どうしての複数の音楽理論的項目を考慮した解釈が必要となります。本書に含まれる譜例に関してはよりシンプルで汎用性の高いコード進行を目指しているため、以上のような理由から、図III-1bに関しては四番目のコードをA♭maj7とした次第です。

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