Watchburg Music
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ノミネート作品一覧


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怒涛の第二回ウォッチバーグ音楽大賞

ノミネート作品一覧
(動画・解説付き)




1. Rainer Fog
- Alice In Chains
2. Leap Of Faith
- The End Machine
3. Astrolus – The Great Octopus
- Candlemass
4. キラリ☆彡スター☆トゥインクルプリキュア
- 北川理恵
5. Is life beautiful?
- Surface
6. ミーチャッタダンス
- 久野美咲、井口裕香、小原好美、千葉進歩
7. Break Your Chains
- Renegade Cartel
8. お願いマッスル
-ファイルーズあい&石川界人


Alice In Chains Rainer Fog
作品解説:
現行メンバーとなってからの三枚目のアルバム、『Rainer Fog』よりタイトルトラック。アルバムの発表自体は2018年だが、2019年のシングルカットということでノミネート。
『Die Young』や『Check My Brain』を彷彿させる、Alice In Chainsお得意の♭2と♭5を駆使した力強いフリジアンのギターリフが曲全体を支配しているが、注目すべきはVerse(Aメロ)もChorus(サビ)も伴奏はこのリフであるという点である。VerseとChorusの違いを歌のメロディ、それからリードギターのオブリガードのみで作っているのである。実は29年前のデビューアルバムの一曲目であるDie Youngでも同じ展開作りがされているという点に気付ければ一層興味深い曲として感じられる。また非常にメロディックな中間部は再結成前にはなかった雰囲気であり、ソロ活動を経たJerry Cantrellならではの作品と言えよう。


The End Machine Leap Of Faith
作品解説:
LAメタルの代表格、Dokkenのデビューから最盛期を支えたメンバー3人に、『いけないチェリーパイ』で有名なLAメタルバンド、ウォレントの現ヴォーカルが組んだ2019年最注目の新バンド、The End Machineのデビューアルバム収録 。要するにDokkenのいないDokkenである。
アルバム収録の各楽曲は、1995年のDokken再結成時のアルバム、『Dysfunctional』の雰囲気を感じさせるが、当時よりも遥かに素晴らしいプロダクション(音質)となっている。この曲はFマイナー系のギターリフから始まるが、このリフに被せられるヴォーカルはFミクソリディアンである。Bridge(Bメロ)からは完全にFミクソリディアンのトーナリティとなるが、サビでいきなりE♭メジャーに転調、コードチェンジはなくしばらくE♭一発が続く。プレイガルケーデンスを経て、Ebのトーナリディから再びFマイナー系のギターリフに入る。こういった展開も、『Dysfunctional』収録のLong Way HomeやMazeを思い起こさせる。


Candlemass Astrolus – The Great Octopus
作品解説:
32年ぶりに復帰した初代ヴォーカル、Johan Langqvistを迎えた製作されたThe Door to Doom収録。本年度のグラミー賞にもノミネートされているので、今回のウォッチバーグ音楽賞ノミネート作品の中で圧倒的に知名度が高い曲と言えよう。
『Mirror Mirror』や『Well of Souls』といったCandlemassの代表曲(二代目ヴォーカル、Messiah Marcolin時代の楽曲)もライブで披露する Johanの歌唱はブランクを感じさせない。曲自体は全盛期のCandlemassの楽曲を彷彿とさせる、モノフォニック主体の正にドゥームメタルの王道。1980年代Candlemassのスタジオアルバム最大の弱点であった音質面に関しては、時代に伴う録音環境の向上により完全に克服されている。Tony Iommiゲスト参加というお墨付きもあり、本作品は現時点におけるメロディックドゥームの頂点であり、到達点と言っても過言ではなかろう。


北川理恵 キラリ☆彡スター☆
トゥインクルプリキュア

作品解説:
第14代目のプリキュアであるキュアスターらの宇宙戦争を題材とした映像作品、スター☆トゥインクルプリキュアの主題歌。通常のプリキュアシリーズでは授業中や部活動の試合中など、日常生活において戦いに巻き込まれるシチュエーションが多いのだが、宇宙、UFO、UMA、妖怪など、SF/オカルトが作品のテーマとなっているため、本作品では非日常が描かれることが多く、最終的にはインテリジェント・デザイン論を踏襲した宇宙創造主との戦いへと帰結する一大スペクタクルとなっている。
曲はE♭メジャーキーのChorus(サビ)から始まるのだが、モーダルインターチェンジの♭VIからのメジャーコードのコンスタントストラクチャーへと続く。ブリッジに入るまでトーナリティはE♭をキープしているのだが、Verse(Aメロ)部分へはsubV7のルート五度下への偽進行でAへと転調する。Bridge(Bメロ)部分はAメジャーキーのIVコードであるDから始まり、一瞬転調したようにも聞こえるが、その後は多くのモーダルインターチェンジが入り乱れるコード進行となる。コンスタントストラクチャーを経て、再びChorusのE♭メジャーキーへ戻るので2トニックシステムが形成されており、非常に大胆な転調がフィーチャーされている。全体を通して、メジャーコードの長二度音程のコンスタントストラクチャーによる進行が多く見られる点にも拘りが感じられる。またプリキュアシリーズのOPは、Aメロ、Bメロ、サビの前後を大サビで包む、A-B-C-D-Aという構成が採用されることが多く、近年の作品でも踏襲されているが、この曲ではA-B-C-Aという大サビが現れない展開となっている。加えて宇宙がテーマということもあり、光線銃風サウンドやシンセサイザーのシーケンスなど、スペイシーなエフェクトが曲の随所に盛り込まれているのも特徴。



Surface Is life beautiful?
作品解説:
2018年、電撃的な再結成で世間の話題をさらったSurfaceの復活第一弾アルバム『On』収録の一曲目。Surfaceと言えば、筆者の隣のクラスの熱狂的B’zファンの女子が「Surface、ぜってー潰す!!」と言っていたのが印象に残っている(2000年代初頭までは小学生もおこづかいでCDを買う時代だった)。現在ではそういった認識の音楽リスナーは多くないと思うが、当時は実際に『和製B’z』などと呼ばれていたこともあり、マスコミの取り上げ方も要因として、一部のB’zファンの反発があった点は否定できない。その理由としては楽曲のクオリティの高さに尽きる。Surfaceはデビューアルバムから、B’zが『7th Blues』から『Survive』のあたりで積極的に取り組んでいた、Tower Of Power的なファンクの要素とハードロックとの融合を自分たちサウンドの持ち味とし、高度なレベルで昇華させてしまったがため、当時のB’zファンが聴きたかったサウンドを同じ編成の別の二人組から聴くのが耐えられなかったのだと推測される。またSurfaceの楽曲に漂う、計算された圧倒的なチャラさが熱狂的B’zファンのフーリガン的精神を育んだのも間違いない。
そういった当時のリアルタイムリスナーからすると、Is life beautiful?に対しては少し変わった印象を抱くことだろう。Tower of Power的なホーンセクションではなく、代わりにストリングスが用いられ、歌詞やサウンドからもチャラさも薄れている。ただ歌詞の内容は別視点から見た『Going My 上へ』や『なあなあ』とも捉えられる上に、Surfaceサウンドの最大の特徴とも言える、ギターカッティングも健在。まさに令和時代のSurfaceとでも言うような進化を遂げている。ちなみにアルバム『On』には『NANANA』や『LIKE a CAT』といった古き良きSurface節全開の曲も収録されているので、好きな方はそちらをどうぞ。


久野美咲、井口裕香
小原好美、千葉進歩
ミーチャッタダンス
作品解説:
2019年にお茶の間に流れた楽曲としては、最も進歩的かつ最も奇妙な作品といっても過言ではなかろう。オトッペ作品としては2019年に『チャラ・ザ・ワールド』という名曲が生まれているのだが、音楽の発展への寄与という観点から本作品がノミネートされている。
この曲の歌唱には所謂シュプレヒシュテンメ(Sprechstimme)という特定の音高に縛られない、歌と語りの中間に位置する歌唱技法が用いられている。またバッキングにはマレット系サウンドによるミニマリズム的アプローチが取られているため、曲の緩急はメロディでもハーモニーでもなく、主にシュプレヒシュテンメのリズムで作られている。段々と同一のリズミックモチーフの間隔を狭くしていき、最終的には7連符で次の展開へと進む。ボイスチェンジャーによる語りを経たミーチャッタパートでは、前述のマレット系サウンドの他にも様々なシンセサウンドが加えられ、Nine Inch Nailsを彷彿とさせる。ちなみに三番のメインで踊っているハナビートは楽曲の中で一切歌っていない。


Renegade Cartel Break Your Chains
作品解説:
マサチューセッツ州、ボストンを中心に活動を行う三人組ハードロックバンド、Renegade Cartelの、アルバム『Dear World』の一曲目。バンドとしては昨年に続き2年連続のノミネート。前作まではメロディックなロックンロールが特徴であったが、本作品ではメロディも残しつつ、Over KillやObituaryのような半音階やトライトーンを使ったスラッシュメタル的な和声技法が用いられている。
メインのリフはF第六音を長六度としたマイナースケールが用いられているが、第七音は使われていないため、メロディックマイナー、ドリアンのどちらを想定して作られたかは不明である。またこのスケールの第三音と第六音で出来るトライトーンを一つの核としてリフに取り込まれている点も見逃せない。また中盤に現れる半音階を使ったリフはナパーム・デスやカンニバル・コープスを彷彿とさせるもので、バンドとして新たなステージに突入したと言えるだろう。


ファイルーズあい
&石川界人
お願いマッスル

作品解説:
一般にボディビルダーは『アスリート』と呼ばれるが、よりその本質を深く捉えるのであれば『アーティスト』と呼ぶべきである。適度な筋力トレーニングは健康増進に良いとされているが、トップビルダーの日々のサイクルは、決して健康寿命を延ばす取り組みとは言えない。過酷なトレーニング、食事制限などは肉体だけでなく、精神にも強い負荷を強いるものである。
それでは何故トレーニングを行うのか、その答えは単に『美』の追求以外の何物でもない。即ちボディビルディングとは肉体という名のキャンバスに描く耽美主義的芸術であり、トップビルダー達は精神と肉体を蝕む環境に打ち勝つほどの、美に対する果てしない欲望を抑えることのできない芸術家なのである。だからこそトップビルダーは宇宙飛行士と並び、国や地域を問わず、老若男女誰からも尊敬される憧れの的となっているのである。
またボディビルディングの魅力として、広く門戸が開かれているという点にある。「筋肉は裏切らない」という格言があるように、努力に対して必ず結果が伴うのが、他の競技には見られないボディビルディングの特徴である。一般の運動種目では、身長などの生まれ持った身体的な特徴や反射神経・運動神経が競技結果において、大きなウェイトを占めているが、(世界レベルのトップビルダーを目指すというのであれば別だが)筋肉に対する知識、トレーニングを効率良く行う計画性、そして負荷と欲望に耐えうる精神力を持ち合わせていれば、先天的な才能に関係無く、競技においてかなりの結果を残すことが可能である。ボディビルディングは頭脳スポーツとも呼ばれるように、一般に浸透しているビルダー=インテリという図式が成立しているのも当然で、競技としてのボディビルディングはズバリ知性と忍耐力の戦いと言えよう。



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