Watchburg Music
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ノミネート作品一覧


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激動の第三回ウォッチバーグ音楽大賞

ノミネート作品一覧
(動画・解説付き)




1. Holy Ground (Shake The Memory)
- The Dead Daisies
2. トキメキコレクター
- 澤田真里愛
3. Children of the Next Level
- Testament
4. 世界が君を必要とする時が来たんだ
- オーイシマサヨシ
5. Darker Thoughts
- Paradise Lost
6. シャンソン娘
- Ainakanna
7. ヒーリングっど♥プリキュア Touch!!
- 北川理恵
8. Blacklash Just Because
- Napalm Death


The Dead Daisies Holy Ground (Shake The Memory)
作品解説:
2021年には70歳を迎える元Deep Purple、Glenn Hughesをヴォーカルに獲得したことにより、全世界で話題持ちきりとなったThe Dead Daisiesのニューアルバム『Holy Ground』よりタイトルトラック。衰えを感じさせないGlenn Hughesの圧倒的な歌唱は健在で、The Dead Daisiesのバンドサウンドと非常にマッチしている。
曲自体は正にロックファンが求める王道中の王道。Pre-Chorus部分には静かなパートが導入され、より楽曲をドラマティックなものとしている。Chorus部分のコード進行は奇数回目がIm→♭III→IV、偶数回目は Im→♭III→♭VIとしており、コード進行のFocal Pointに変化をもたせる工夫が施されている。メンバー変更による影響なのか、以前よりもややファンクミュージック色が感じられ、Doug Aldrichのワウを用いたプレイなども聴けるのも良い。


澤田真里愛 トキメキコレクター
作品解説:
サンリオによる大人気ファンタジーシュールギャグアニメ、『ミュークルドリーミー』のエンディングテーマ。導入からIm→IV7→V7/V→V7という調性外の音高を積極的に利用するコード進行を使用し、メインの歌メロが始まるVerse部分にもこの進行を応用している。またVerse部分ではベースがEマイナーペンタトニックとF#シンメトリックディミニッシュトスケールをなぞっており、独特の雰囲気を作っている。Bridge部分では短い間隔で二種類のホールトーンスケールを入れ込んだランフレーズが用いられるなど、アイデア満載である。
Chorus部分はセカンダリードミナントを応用した明るい曲調になるのだが、その後は『Bohemian Rhapsody』を彷彿させるような、目まぐるしい展開となる(ただしTV放送には乗っていない)。これは作品のテーマが『夢』であることから、音楽にも夢の移ろいを反映させているものと思われる。


Testament Children of the Next Level
作品解説:
Testamentの4年振り、13枚目のスタジオアルバム『Titans of Creation』の一曲目。結成37年ともなると、バンドの方向性や音楽性にも変化が現われようものだが、ことTestamentに至っては、そのような心配は皆無である。メンバーの年齢も50代半ばを迎えているのだが、サウンドは落ち着くどころか、更に強力なものとなっている。
E♭フリジアンを基調としたリフに、Chuck Billyの存在感のある歌唱が乗せられ、正統派のスラッシュメタルを聴かせる。下手に今風のサウンドを取り入れず、流行に左右されないその姿勢にバンドとしての自信が垣間見えると言えよう。テレビアニメ『Metalocalypse』風のビデオクリップもユーモアに富んでおり、ここから興味を持った若い世代の音楽ファンも少なくないだろう。


オーイシマサヨシ 世界が君を必要とする時が来たんだ

作品解説:
2020年を代表するロボットアニメの傑作、『トミカ絆合体アースグランナー』の主題歌。OxT名義で発表された『SSSS.GRIDMAN』の主題歌、『UNION』でこの声に聴き覚えがあるリスナーも少なく無いだろう。メジャーキーの中でbVI、bVII、IV-などのモーダルインターチェンジコードを効果的に使っており、またブリッジでは転調に見せかけて、転調していない点も洒落ている。
何よりも特筆すべき点は、曲だけでなく歌詞もオーイシマサヨシ氏本人が書いている事である。有名ミュージシャンがアニメ作品の主題歌を担当する場合、作詞は作品の世界観を反映させられるよう、作詞家や作品関係者が行うことは少なくない。しかしながらこの楽曲はミュージシャン本人の作詞でありながらも、『アースグランナー』の世界を視聴者に伝えることができているという点が驚異である。制作にあたってはアニメの映像や設定資料を相当に研究したものであることが伺い知れる。



Paradise Lost Darker Thoughts
作品解説:
ゴシックメタルのパイオニア、Paradise Lostの3年振り、16枚目のスタジオアルバム『Obsidian』の一曲。これだけの大物バンドが2-3年のインターバルで作品を30年間発表し続けられるのは、ファンにとって、この上ない幸せである。
Paradise Lostのサウンドは時代によって大きく異なるのだが、Darker Thoughtsではこれまでの作品を総括するようなサウンドを聴く事ができる。ストリングスセクションの導入、静と動のメリハリある展開、メロディックな歌唱に加え、90年代後半あたりから積極的に使用してこなかったデスヴォイスも十分に堪能する事ができるため、原点回帰と感じるリスナーも少なくないだろう。しかしながら音質にやや難があった初期の作品に比べ、本作は圧倒的なサウンドクオリティを誇っているため、バンドの作りたい世界観をストレートに届ける事に成功している。


Ainakanna シャンソン娘
作品解説:
映画『輪廻』の主題歌を担当した事で知られる、シンガーソングライターの扇愛菜氏とドラマーkanna氏による2ピースユニット、Ainakannaによる作品。一聴するとフランスギャルによる『夢見るシャンソン人形』を思い起こさせるが、音楽としては非常に進歩的なアイデアが多数盛り込まれている。
まずリスナーが耳を奪われるのはアンサンブルのミックスだろう。60年代を彷彿させるアナログ感あふれたレトロなプロダクションとなっているのだが、それに反し歌唱だけは非常にクリアな音質となっている。またスネアのパターンも特徴的で、二拍目に八分音符で二連打、四拍目では一発というリズムとなっている。これはBlankey Jet Cityの代表作『胸がこわれそう』などで聴かれるリズムパターンである。物語性を感じさせる歌詞と、それに合わせた歌唱法の変化など、曲の展開においても工夫が見られる。またビデオクリップ内で、メンバー扮するパワーパフガールズのバターカップ風キャラクターも味があって素敵!!


北川理恵 ヒーリングっど♥プリキュア Touch!!

作品解説:
ヒーリングアニマルと共に地球をお手当てする伝説の戦士『プリキュア』と、ウィルスをモチーフとした敵対勢力『ビョーゲンズ』との仁義なき戦いを描いた、朝日放送の長寿シリーズ17作品目となる『ヒーリングっど♥プリキュア』の主題歌。近年のプリキュアは謎解きや、伏線の回収といった複雑なシナリオが特徴となっているが、本作はミステリー要素や数年に渡って続いたコンセプト要素を廃し、シリーズ初期のようにストレートな日常生活の描写とプリキュア達の精神的な成長を中心に据えている。また過去作品と比べコメディ色が非常に薄く、シリアスでヘヴィな展開が続くのも本作品の特徴。伏線を一切張らずに突如現れ、凶悪な敵幹部を一瞬で抹殺したキュアアースの登場シーンや(しかもその時のセリフが怖い)、
助けを求める瀕死の敵幹部を苦悩の末(しかもその苦悩は敵幹部を助けたいなどという甘いものではない)、容赦無く消滅させるという決断をする、ハグプリやスタプリと真逆の展開には、多くの視聴者が度肝を抜かれたことだろう。また公開が遅れてしまった『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』も、諸々の影響で興行収入こそ振るわなかったものの、作品としては非常に素晴らしい出来であった。
『ヒーリングっど♥プリキュア Touch!!』は転調二回、Post-Churusで曲の始まりと終わりを挟む、典型的なプリキュア形式に則った作品ではあるが、Verse、Pre-Chrus、Post-ChorusのキーがC、Chorus部分のみFという調性となっており、Post-Chrus部にChorus以外のセクションと共通の調が採用されているのは、プリキュア主題歌の中でも異色と言って良い。意図的なのか否かはともかく、このような確立された形式の中での意表をついた転調は、『ピアノソナタk545』を始めとするモーツァルト後期の作品の影響が見られる。またPre-ChrusからChorusへのコード進行は、subV7/V→V7→♭VII7sus4→V7sus4/IVとなっており、サブスティチュートドミナント、モーダルインターチェンジ、セカンダリードミナントを利用した下属調への転調が行なわれている。このような複雑な音楽をポップに聴かせる手法はプリキュア主題歌の王道と言えよう。



Napalm Death Blacklash Just Because

作品解説:
初期のグラインドコアバンドの面影はすっかり薄れ、社会派エクストリームメタルバンドとしての地位を確立したNapalm Death、16枚目のスタジオアルバム、『Throes of Joy in the Jaws of Defeatism』収録。90年代に方向性を定めて以降、常に質の高い作品を送り出してきたNapalm Deathであるが、2020年も非常に安定した作品作りが行われている。
破壊力のあるブラストビートも健在だが、ただ激しいだけでなく、曲の展開や随所に現れるメロディセンスが多くのエクストリームメタルバンドとは一線を画す要因となっている。またギターリフに現れるトライトーンの使い方が秀逸で、トライトーンが上手く機能しているため、連続で現れる長三度も同様に不穏な空気を作り出すことができている。



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