Watchburg Music
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ノミネート作品一覧


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波乱の第四回ウォッチバーグ音楽大賞

ノミネート作品一覧
(動画・解説付き)




1. Gaddaar
- Bloody Wood
2. The Writing On The Wall
- Iron Maiden
3. Atone
- Jerry Cantrell
4. Apology
- Jason Bieler and The Baron Von Bielski Orchestra
5. Beyond Hope
- Jason Bieler and The Baron Von Bielski Orchestra
6. ニューチャレンジャー
- BOYS AND MEN
7. Viva! Spark! トロピカルージュ!プリキュア
- Machico
8. Inhuan Harvest
- Cannibal Corpse


Bloody Wood Gaddaar
作品解説:
2016年、インドのニューデリーで結成されたBloody Woodの作品。過去にはBeatlesやKula Shakerなど、インド音楽の要素を取り入れたロックバンドは存在したが、Bloody Woodはインド発の真正フォークメタルバンドとして、現在世界から最も注目されているバンドの一つである。
Sepulturaの『Roots Bloody Roots』を彷彿させる本作品は、フリジアン風のインディアンスケールやインド映画で聴かれるようなダンサブルなグルーヴが大胆にフィーチャーされているだけでなく、ヒップホップやインダストリアルメタルの要素も加えられ、高いレベルでの音楽文化のミクスチャーが完成されていると言えよう。またこのヒンディ語と英語を交えたラッピングは決して他のバンドには真似できない芸当である。令和の時代の新しいメタル像を作り出すバンドとして、今後の活躍が期待される。


Iron Maiden The Writing On The Wall
作品解説:
全米アルバムチャート三位に輝いたIron Maiden通算17枚目のアルバム、『戦術/Senjutsu』に含まれる一曲。練り込まれた曲構成、ケルト風のメロディなど、正にIron Maidenの真骨頂とも言うべき傑作である。
イントロのアコースティックギターや続くリフなどにはブルースロックの要素が感じられるものの、下主音から主音への動き、つまり自然短音階を用いた主音への解決など、一聴してIron Maidenの曲だと理解できる作風はファンの期待を決して裏切らない。最新作ということもあり、これからIron Maidenを聴いてみたいという若い世代にもオススメの一曲と言えよう。


Jerry Cantrell Atone
作品解説:
Degradation Trip以来、19年振りのソロアルバム『Brighton』からのリードシングル。Guns N’RosesやVelvet Revolverで活躍したDuff McKaganの参加でも話題となった本作では、どこを切り取ってもJerry Cantrellらしい作品となっている。
コーラス部ではハーモニックマイナースケールが取り入れられているなど、ダークな世界観を演出しているものの、Alice In Chainsのような重々しさはやや薄れ、ギターの多重録音やフランジャーの使用など、多彩なサウンドで空間的な広がりを感じさせる。随所で聴かれるアコースティックギターやストリングベンドを利用したギターリフはJerry Cantrell流のカントリーミュージックの解釈とも取ることができる。


Jason Bieler and
The Baron Von
Bielski Orchestra
Apology

作品解説:
Jason Bieler and The Baron Von Bielski Orchestra名義で発表された、3年振りのソロアルバム、Songs for the Apocalypseの一曲。Jason Bielerは2000年に発表されたSaigon Kickのアルバムを最後に約20年、表舞台から姿を消したかのように思われていたが、2010年代からは元Yngwie Malmsteen BandのJeff Scott Sotoとの共演などでしばしば話題に上るようになっていた。今作、Songs for the Apocalypseの発表により、再び音楽界のメインストリームに躍り出たと言えよう。
曲中の浮遊感漂うバース部分の旋律にはリディアンモードが使われ、コーラスではトニックペダル風のリフの上で|I|♭IIIdim|IVm|I|というアッパーストラクチャーが推移しているなど音楽ファンを唸らせた。非常に高い音楽性と同時に、十分に一般の音楽ファンにもアピールするだけのキャッチーさも兼ね備え、このクオリティには脱帽という言葉しかない。



Jason Bieler and
The Baron Von
Bielski Orchestra
Beyond Hope
作品解説:
再び Jason Bieler and The Baron Von Bielski Orchestra名義で発表された、Songs for the Apocalypseの一曲。Apologyが静と安定の音楽だとしたら、こちらは動と緊張の音楽である。
David Ellefsonの参加でも話題となった今作品は、90年代のMegadethを彷彿とさせるグルーヴを持ち、Saigon KickとMegadethの融合という音楽ファンの夢を実現させたような仕上がりとなっている。またコーラス部分には |I|bIII bVI|bII|IVm I|というエオリアンとフリジアンのモーダルインターチェンジが使われるなど、Jason Bieler独特のメロディセンスを感じさせる。


BOYS AND MEN ニューチャレンジャー
作品解説:
テレビ東京系列の大ヒット人気アニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』の主題歌。同主調へのダイレクトモジュレーションに加え、フルバージョンではテクスチュアの変化、リズムやグルーヴの変化など様々なテクニックと要素が一曲の中に詰め込まれた作品となっている。
この『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』は『トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察』の後番組として、TBS系で放送された『新幹線変形ロボ シンカリオン』の続編である。JR全面協力により、高いクオリティで新時代のロボットアニメとして人気を博した前作、所謂ファースト・シンカリオンであったが、その終わらせ方には様々な意見が視聴者から寄せられた。ロボットアニメとして非常に珍しく、放送期間が延長され、二年目には新たなエージェント『キリン』との対決を描く新シリーズが始まり、シンカリオン自体も新しい合体能力を得て、これから商品展開だという矢先、番組編成上の都合のため、突然の打ち切りが決定。本来描かれるべきだったキリンの思想や、一年目は戦力外であったヒロイン、上田アズサの隠された能力などが深掘りできないまま、突然の宣戦布告からの最終対決はわずか四話。結果として、ほとんど登場機会を得ることのできなかったラスボス、『ブラックシンカリオンオーガ』の在庫を、多くの小売店が抱えることとなってしまった。ただし突然の打ち切りにも関わらず、きちんと最終対決まで描き切ったこと、また 『劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』へと繋げられたことなどは、多くのファンを喜ばせた。
そして2021年に満を持して放送開始されたシンカリオンZだが、序盤では前作との関わりが明示されていなかった。視聴者の間では前作の続きの話なのか、パラレルワールドの話なのか、一部で大きな論争が巻き起こったが、回を重ねるごとに少しずつ前作との関わりが明かされ、主人公新多シンが超進化研究所東日本司令室大宮支部へ配属となった際、ファーストの登場人物が再び仲間として現れる展開にはお茶の間が興奮の渦に包まれた。そして第三十三話『伝説の運転士!速杉ハヤト』、遂に新旧主人公が顔を合わせる展開は正に令和の『Ζガンダム』と呼ぶに相応しい。
シン・エヴァンゲリオンとのコラボ回や、H5ハヤブサの運転士として前作の発音ミクに続く、『銀河鉄道999』からのメーテル登場などでも大きな反響があったことも記憶に新しい。玩具売り上げも引き続き好調のようで、今後もシンカリオンが走り続けるレールからはますます目が離せない。


Machico Viva! Spark! トロピカルージュ!プリキュア

作品解説:
プリキュア通算18作目『トロピカルージュ!プリキュア』の主題歌。「プリキュア史上初、人魚のプリキュア誕生」としてニュースにもなった本作だが、既に『プリキュア5GoGo!』の第四十話で、人魚からプリキュア及びミルキィローズへの変身が描写されていることを忘れてはいけない。
『トロピカルージュ!プリキュア』は海を舞台とした作品であることから、主題歌には大胆にアフロキューバンスタイルを取り入れたアレンジが施されている。鍵盤楽器(もしくはマレット)による速いアルペジオ、各種パーカッションやトロンボーンの使用など、ソン・モントゥーノやマンボなどの手法を聴くことができ、同じラテンミュージックでも、きちんとアフロキューバンスタイルとブラジリアンスタイルを分けて考えられている。プリキュアの主題歌としては転調を含んでいないことが特徴だが、印象的なバース部分には|I|bVII|bVI|I|というAeolian Modal Interchangeが使われている。
残酷な世界観を持つ前作『ヒーリングっど♥プリキュア!』とは異なり、『トロピカルージュ!プリキュア』では明るく爽快なプリキュア像が描かれた。敵幹部も前作のような同情の余地が全くない極悪非道な邪悪な存在ではなく、最終回の時点では敵味方含め、全員が生存するエンディングを迎えた。また秋映画では『ハートキャッチプリキュア!』との共闘が話題となった(もちろん史上最も血の気の多いプリキュアであるエリカと史上最も高飛車なプリキュアであるローラの大喧嘩からスタートするのではあるが)。
本作品の最大のポイントは、記憶を消す装置の存在である。この装置によって、人魚の世界と人間の世界の秩序が守られているのだが、全ての敵を排除した後、人魚も人間も戦いの記憶を全て失うことになると、シリーズの後半で女王に告げられる(実は主人公夏海まなつとローラは過去に出会っていたのだが、装置によって記憶を奪われていた)。この無慈悲なシナリオで、人魚としてプリキュアとなったローラはどのような行動を取り、どのような決断を下すのかが最終回で描かれるのだが、結果は視聴者の予想の裏をかいたものであったと言えよう。お茶の間の多くの視聴者はきっと「プリキュア達が人魚の女王に反旗を翻し、記憶を奪う装置を破壊、全ての記憶を解放し、人魚と人間は共存する道を選びました」という結末を予想したに違いない。だがローラの決断は「全ての記憶を奪い、女王になってディストピアを存続させる」というものだったのである。このように勧善懲悪だけでは語れない、視聴者に正義や道徳、人生の在り方を考えさせることが近年のプリキュアの傾向と言える。
ここで多くの視聴者が感じるのは、プリキュアが記憶を失ったことでオールスター系の劇場版は一体どうなるのかという疑問であろうが、残念なことに2022年度を以ってフレッシュ以降約15年続けられたプリキュアの春映画は廃止となったのである。20周年を間近に控え、新しい展開を模索しているプリキュアシリーズからは今後も目が離せない。



Inhuan Harvest Cannibal Corpse

作品解説:
Cannibal Corpseの4年振り、15枚目のスタジオアルバムの一曲。クロマティックスケール、フリジアンモードやハーモニックマイナーの派生モードの使用、ブラストビートやテンポチェンジに加え、かなり正統派のギターソロも含まれており、デスメタルファンが聴きたい音楽が、非常に高いレベルで一曲にまとめられている。
フロリダ出身のバンドではないものの、デスメタルと言えばCannibal Corpseという印象を持っている音楽ファンも少なくないだろう。本作品で提供されるサウンドも正にCannibal Corpse節全開と言ったところで、ベテランらしく、ファンが何を求めているのかを理解した作風となっている。即席麺と言えば『日清カップヌードルしょうゆ』、ビールと言えば『キリン一番搾り』、デスメタルと言えばCannibal Corpseとなっているように、既にデスメタルのスタンダードはこのCannibal Corpseであると言っても過言ではないだろう。



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